傷んだ家より厄介? 売れない・動かせない空き家ワースト5

傷んだ家より厄介なのは、誰の家かはっきりしない空き家。売れない・動かせない空き家ワースト5とその共通点、まず確認したい書類と境界について紹介します。

決めないまま時間が過ぎることのリスク

今回は少し視点を変えて、「どんな空き家が一番やっかいなのか」を考えます。

空き家というと、屋根が崩れかけた古い家を思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん傷みは大きな問題です。ただ、不動産の実務では「建物の傷みは、お金をかければ何とかなる。本当に困るのは、お金だけでは解決しない問題だ」とよく言われます。

この記事では、タチが悪いと言われる空き家の特徴をワースト5の形で整理します。あわせて、今日からできる対策もまとめました。
もちろん、空き家自体が悪い訳ではないので安心してください。原因を明らかにすることで解決方法は見つかります。

問題となるのは書類と土地にある

5位:家財・仏壇が残ったまま。空き家のままにする理由の1位は「物置」

今後5年ほど空き家のまま持っておくつもりの世帯に理由を聞くと、1位は「物置として必要」で55.8%でした。「仏壇など他に置き場がないものがある」「家財などの処理が困難」も、それぞれ21.6%あります。

また、売ったり貸したりするつもりの世帯でも、課題の3位は「家財などの処理」(37.4%)です。

ありがちな理由

家財が残っていること自体は、珍しくありません。タチが悪いのは、「片付けが終わるまでは何も決められない」という状態になりやすい点です。片付けが進まないまま数年がたつと、その間にも次の4位の問題が進んでいきます。

4位:傷みが進んでいる。見に行く回数が減ると「構造の不具合」が倍以上に

空き家全体では65.8%に何らかの腐朽・破損があり、相続した空き家に限ると7割を超えます。売ったり貸したりする上での課題の1位も「住宅の傷み」(43.3%)でした。

注目したいのは、管理の頻度との関係です。屋根の変形や柱の傾き、雨漏りによる著しい腐朽など「構造上の不具合」がある空き家の割合は、月に1回以上見ている家では15〜18%程度ですが、年に1〜数回だと24.3%、数年に1回だと33.3%に上がります。

見に行く回数と構造の不具合の関係性

傷みは「直せば何とかなる」問題ですが、放っておくほど直す費用がかさみ、やがて解体しか選べなくなります。ここまでが「見た目で分かる問題」です。ここから先の3つは、外から見ても分かりません。

3位:再建築できない・道路付けが悪い。数は少ないが、打てる手が限られる

建築基準法では、原則として幅4m以上の道路に敷地が2m以上接していないと、家を建て直せません(接道義務)。古い住宅地には、この条件を満たさない土地が残っています。

調査では、売ったり貸したりする上での課題として「再建築不可(道路付けの悪さなど)」を挙げた世帯は7.6%、空き家のままにしておく理由として挙げた世帯は6.9%でした。割合だけ見ると多くはありません。

それでも3位にしたのは、自分の努力だけでは解決しにくいからです。建物を直すことはできても、道路の幅や接し方は簡単には変えられません。買い手が限られ、売れても価格が伸びにくくなりやすい土地です。まずは自分の家が当てはまるかどうかを、役所の建築指導の窓口などで確認しておくと安心です。

2位:境界がはっきりしない。境界が確定している土地は全国で約半分

土地を売るとき、隣の土地との境目(境界)がはっきりしていないと、測量や隣の人との立ち会いが必要になることがあります。相手が遠方にいたり、代替わりしていたりすると、それだけで時間がかかります。

国が進めている「地籍調査」(土地の境界や面積を確かめる調査)の進み具合は、令和7年度末の時点で全国の対象地域の53%です。残りの約半分の土地は、境界が公的に確かめられていないということになります。

境界の問題も、建物を見ただけでは分かりません。「いざ売ろうとしたら、まず境界の確認から」となり、話が止まりやすいのが2位の理由です。

1位:名義が亡くなった人のまま・共有。共有の空き家は約4軒に1軒が手つかず

一番タチが悪いのは、「誰の家なのか」がはっきりしない空き家です。

調査では、登記も名義変更も「いずれも行っていない」世帯は全体で14.1%でした。これが、2人以上で持っている共有の空き家では23.8%と、約4軒に1軒にのぼります(1人で持っている場合は12.5%)。

名義問題

登記をしなかった理由で一番多いのは「登記や名義変更をしなくても困らなかった」(56.8%)です。たしかに、住んでいない家の名義は、普段の生活では困りません。困るのは「売ろう」「貸そう」「解体しよう」と決めたときです。名義が亡くなった親のままだと、相続人全員の話し合いや書類集めから始めることになります。相続が重なると関係者が増え、まとまるまでにさらに時間がかかります。

国の調査では、登記簿から所有者がすぐに分からない土地は全国の24%あり、その主な原因の6割超が相続登記がされていないことだとされています。

こうした状況を受けて、2024年4月から相続登記が義務になりました。2024年4月より前に相続した不動産で登記がまだのものも対象で、期限は2027年3月31日です。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になる場合があります。期限まで、あと約5か月です。

5つに共通するのは「決めないまま時間が過ぎること」

実はここまでの5つには、共通点があります。どれも、時間がたつほど解決が難しくなるということです。

・家財が残ったままだと、片付けが終わるまで次に進めない

・見に行く回数が減ると、構造の不具合が増える

・名義や境界は、代替わりするほど関係者が増える

調査では、相続の前に家族で話し合うなどの対策をしていた世帯は23.0%でした。対策をしていなかった場合、「空き家として所有していた」割合は45.1%で、対策をしていた場合(29.4%)の約1.5倍です。

売るのか、貸すのか、残すのか。どれが正解かは、家族の事情によって違います。ただ、「まだ決めない」という選択にも、時間とともにコストがかかることは知っておいて損はありません。

まずは「書類と境目の確認」から


今日からできることを4つにまとめました。

・今回は少し視点を変えて、「どんな空き家が一番やっかいなのか」を考えます。

空き家というと、屋根が崩れかけた古い家を思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん傷みは大きな問題です。ただ、不動産の実務では「建物の傷みは、お金をかければ何とかなる。本当に困るのは、お金だけでは解決しない問題だ」とよく言われます。

この記事では、国土交通省の最新調査(令和6年空き家所有者実態調査)などのデータをもとに、タチが悪い空き家の特徴をワースト5の形で整理します。あわせて、今日からできる対策もまとめました。

[画像:01_worst5.png]

5位:家財・仏壇が残ったまま。空き家のままにする理由の1位は「物置」

今後5年ほど空き家のまま持っておくつもりの世帯に理由を聞くと、1位は「物置として必要」で55.8%でした。「仏壇など他に置き場がないものがある」「家財などの処理が困難」も、それぞれ21.6%あります。

また、売ったり貸したりするつもりの世帯でも、課題の3位は「家財などの処理」(37.4%)です。

[画像:02_reasons_keep.png]

家財が残っていること自体は、珍しくありません。タチが悪いのは、「片付けが終わるまでは何も決められない」という状態になりやすい点です。片付けが進まないまま数年がたつと、その間にも次の4位の問題が進んでいきます。

4位:傷みが進んでいる。見に行く回数が減ると「構造の不具合」が倍以上に

空き家全体では65.8%に何らかの腐朽・破損があり、相続した空き家に限ると7割を超えます。売ったり貸したりする上での課題の1位も「住宅の傷み」(43.3%)でした。

注目したいのは、管理の頻度との関係です。屋根の変形や柱の傾き、雨漏りによる著しい腐朽など「構造上の不具合」がある空き家の割合は、月に1回以上見ている家では15〜18%程度ですが、年に1〜数回だと24.3%、数年に1回だと33.3%に上がります。

[画像:03_manage_freq.png]

傷みは「直せば何とかなる」問題ですが、放っておくほど直す費用がかさみ、やがて解体しか選べなくなります。ここまでが「見た目で分かる問題」です。ここから先の3つは、外から見ても分かりません。

3位:再建築できない・道路付けが悪い。数は少ないが、打てる手が限られる

建築基準法では、原則として幅4m以上の道路に敷地が2m以上接していないと、家を建て直せません(接道義務)。古い住宅地には、この条件を満たさない土地が残っています。

調査では、売ったり貸したりする上での課題として「再建築不可(道路付けの悪さなど)」を挙げた世帯は7.6%、空き家のままにしておく理由として挙げた世帯は6.9%でした。割合だけ見ると多くはありません。

それでも3位にしたのは、自分の努力だけでは解決しにくいからです。建物を直すことはできても、道路の幅や接し方は簡単には変えられません。買い手が限られ、売れても価格が伸びにくくなりやすい土地です。まずは自分の家が当てはまるかどうかを、役所の建築指導の窓口などで確認しておくと安心です。

2位:境界がはっきりしない。境界が確定している土地は全国で約半分

土地を売るとき、隣の土地との境目(境界)がはっきりしていないと、測量や隣の人との立ち会いが必要になることがあります。相手が遠方にいたり、代替わりしていたりすると、それだけで時間がかかります。

国が進めている「地籍調査」(土地の境界や面積を確かめる調査)の進み具合は、令和7年度末の時点で全国の対象地域の53%です。残りの約半分の土地は、境界が公的に確かめられていないということになります。

境界の問題も、建物を見ただけでは分かりません。「いざ売ろうとしたら、まず境界の確認から」となり、話が止まりやすいのが2位の理由です。

1位:名義が亡くなった人のまま・共有。共有の空き家は約4軒に1軒が手つかず

一番タチが悪いのは、「誰の家なのか」がはっきりしない空き家です。

調査では、登記も名義変更も「いずれも行っていない」世帯は全体で14.1%でした。これが、2人以上で持っている共有の空き家では23.8%と、約4軒に1軒にのぼります(1人で持っている場合は12.5%)。

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登記をしなかった理由で一番多いのは「登記や名義変更をしなくても困らなかった」(56.8%)です。たしかに、住んでいない家の名義は、普段の生活では困りません。困るのは「売ろう」「貸そう」「解体しよう」と決めたときです。名義が亡くなった親のままだと、相続人全員の話し合いや書類集めから始めることになります。相続が重なると関係者が増え、まとまるまでにさらに時間がかかります。

国の調査では、登記簿から所有者がすぐに分からない土地は全国の24%あり、その主な原因の6割超が相続登記がされていないことだとされています。

こうした状況を受けて、2024年4月から相続登記が義務になりました。2024年4月より前に相続した不動産で登記がまだのものも対象で、期限は2027年3月31日です。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になる場合があります。期限まで、あと約5か月です。

5つに共通するのは「決めないまま時間が過ぎること」

ここまでの5つには、共通点があります。どれも、時間がたつほど解決が難しくなるということです。

・家財が残ったままだと、片付けが終わるまで次に進めない
・見に行く回数が減ると、構造の不具合が増える
・名義や境界は、代替わりするほど関係者が増える

調査では、相続の前に家族で話し合うなどの対策をしていた世帯は23.0%でした。対策をしていなかった場合、「空き家として所有していた」割合は45.1%で、対策をしていた場合(29.4%)の約1.5倍です。

売るのか、貸すのか、残すのか。どれが正解かは、家族の事情によって違います。ただ、「まだ決めない」という選択にも、時間とともにコストがかかることは知っておいて損はありません。

まずは「書類と境目の確認」から

今日からできることを4つにまとめました。

・登記の名義を確かめる(法務局で登記事項証明書を取れば、今の名義人が分かります)
・名義が亡くなった人のままなら、2027年3月31日の期限を家族で共有する(話し合いがまとまらない場合は「相続人申告登記」という簡単な手続きもあります)
・境界の目印(境界標)や測量図が手元にあるかを確認する
・家財は「残すもの」だけ先に決め、仏壇などの行き先を家族で話しておく

建物の傷みに比べて、名義・境界・道路の問題は外から見えにくく、気づいたときには時間がかかるものばかりです。まずは書類を1枚取ってみるところから始めてみてください。

__________


■出典
・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月29日公表)
 https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html
・国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」報告書(2025年8月)
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001907478.pdf
・国土交通省「『土地の戸籍』に関する最新の調査実施状況を公表します」(2026年6月26日)
 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo06_hh_000001_00024.html
・法務省「相続登記の申請義務化に関する概要資料」
 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00600.html
・法務省民事局「『所有者不明土地』の解消に向けて」(2022年9月、東京都資料掲載)
 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/akiya_renrakukyogikai_17_02
・建築基準法(e-Gov法令検索)
 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201

※空き家所有者実態調査は、令和5年住宅・土地統計調査で空き家を所有していると答えた世帯から抽出した調査です(有効回答6,294世帯)。割合は拡大推計による推計値です。
※「腐朽・破損あり」は、構造上の不具合、外観や室内の全体的・部分的な腐朽・破損があったものの合計です(19.6%+3.0%+43.2%)。
※登記・名義変更の有無は、相続登記が義務化される前の2023年10月1日時点の状況です。
※地籍調査の進捗率は、国有林野や湖沼などを除いた「地籍調査対象地域」に対する割合です。地籍調査が済んでいない土地でも、個別に境界が確定している場合があります。
※所有者不明土地の割合(24%)とその原因の内訳(相続登記の未了63%)は、国土交通省の2020年の調査によるものです。
※接道義務には例外や個別の許可制度があります。再建築できるかどうかは、必ず自治体の建築指導の窓口で確認してください。
※相続登記の期限や過料、相続人申告登記の詳細は、法務局または司法書士にご相談ください。登記の名義を確かめる(法務局で登記事項証明書を取れば、今の名義人が分かります)

・名義が亡くなった人のままなら、2027年3月31日の期限を家族で共有する(話し合いがまとまらない場合は「相続人申告登記」という簡単な手続きもあります)

・境界の目印(境界標)や測量図が手元にあるかを確認する

・家財は「残すもの」だけ先に決め、仏壇などの行き先を家族で話しておく

建物の傷みに比べて、名義・境界・道路の問題は外から見えにくく、気づいたときには時間がかかるものばかりです。まずは書類を1枚取ってみるところから始めてみてください。

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■出典

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月29日公表)

 https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html

・国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」報告書(2025年8月)

 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001907478.pdf

・国土交通省「『土地の戸籍』に関する最新の調査実施状況を公表します」(2026年6月26日)

 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo06_hh_000001_00024.html

・法務省「相続登記の申請義務化に関する概要資料」

 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00600.html

・法務省民事局「『所有者不明土地』の解消に向けて」(2022年9月、東京都資料掲載)

 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/akiya_renrakukyogikai_17_02

・建築基準法(e-Gov法令検索)

 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201

※空き家所有者実態調査は、令和5年住宅・土地統計調査で空き家を所有していると答えた世帯から抽出した調査です(有効回答6,294世帯)。割合は拡大推計による推計値です。

※「腐朽・破損あり」は、構造上の不具合、外観や室内の全体的・部分的な腐朽・破損があったものの合計です(19.6%+3.0%+43.2%)。

※登記・名義変更の有無は、相続登記が義務化される前の2023年10月1日時点の状況です。

※地籍調査の進捗率は、国有林野や湖沼などを除いた「地籍調査対象地域」に対する割合です。地籍調査が済んでいない土地でも、個別に境界が確定している場合があります。

※所有者不明土地の割合(24%)とその原因の内訳(相続登記の未了63%)は、国土交通省の2020年の調査によるものです。

※接道義務には例外や個別の許可制度があります。再建築できるかどうかは、必ず自治体の建築指導の窓口で確認してください。

※相続登記の期限や過料、相続人申告登記の詳細は、法務局または司法書士にご相談ください。

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