「今すぐ困っているわけではないから、実家はしばらくそのままでもよいだろう」
空き家を相続したとき、このように考える方もいるでしょう。
すぐに売却する必要があるとは限りません。将来自分や家族が住む予定があるなら、所有し続けることも一つの方法です。
ただし、誰も住んでいないことと、何もしなくてよいことは別です。
空き家を持ち続ける場合には、建物や庭の状態を確認し、必要に応じて手入れをする必要があります。
また、時間がたってから「やはり売ろう」と考えたときに、
「もっと早く考えておけばよかった」
とならないよう、売る・貸す・管理する・活用するといった選択肢を早めに知っておくことが大切です。
家は建てたときの状態が、そのまま何十年も続くものではありません。
屋根、外壁、雨どい、窓、給排水設備などは、時間とともに傷んでいきます。
人が住んでいる家なら、
「雨漏りしている」
「窓が閉まりにくくなった」
「水道の調子がおかしい」
といった変化に気付きやすいでしょう。
一方、空き家では異常が起きても、すぐに気付けない場合があります。
そのため、しばらく所有するのであれば、定期的に家の状態を確認することが大切です。
特に遠方の実家では、
「次に帰省したときに見ればよい」
と思っているうちに数か月、場合によっては1年以上たってしまうこともあります。
「売るかどうかはまだ決められない」という場合でも、管理することと、売却を決断することは分けて考えましょう。
売却を決めていなくても、家が傷まないように確認しておくことには意味があります。
空き家の問題は、所有者だけの問題で終わらない場合があります。
庭木の枝が隣の土地や道路にはみ出したり、雑草が大きく伸びたりすることがあります。
建物の状態が悪くなれば、屋根材や外壁の一部が落ちる心配が出てくることもあります。
また、人が住んでいないことが外からわかりやすい家では、防犯について気になる場合もあります。
大切なのは、
「空き家を持っていること自体が悪い」
ということではありません。
問題になるのは、必要な管理が行われず、建物や周辺の状態が悪くなっていく場合です。
そのため、売却するかどうかを決める前でも、
「今、この家はどのような状態なのか」
を知っておく必要があります。
空き家について調べていると、
管理不全空家(管理が十分に行われず、このままでは問題が大きくなるおそれのある空き家)
特定空家(倒壊などの危険や、衛生・景観・周辺環境への大きな悪影響があると判断される空き家)
という言葉を見ることがあります。
難しそうに感じますが、まずは、
「管理状態が悪い空き家について、法律に基づいて市区町村が改善を求める制度がある」
と理解しておけばよいでしょう。
現在の空家法では、適切な管理が行われず、そのまま放置すると特定空家等になるおそれがある空き家を「管理不全空家等」として、市区町村が指導や勧告を行う仕組みがあります。国土交通省のガイドラインも2026年9月に改正されています。
ここで注意したいのは、空き家になっただけで、すぐに「特定空家」になるわけではないことです。
家の状態や管理状況などを踏まえて判断されます。
ですから、
「親の家が空き家になった。すぐ行政処分を受けるのではないか」
と必要以上に心配する必要はありません。
反対に、
「自分の家だから、どのような状態でも問題ない」
と考えるのも適切ではありません。
まず現在の状態を確認し、必要な管理を行うことが基本です。
固定資産税(毎年1月1日時点の土地や建物の所有者などに課される税金)についても、空き家では知っておきたい点があります。
住宅が建っている土地には、一定の条件で住宅用地特例(住宅が建っている土地の固定資産税などを軽くする制度)が適用されます。
しかし現在は、市区町村から「管理不全空家」または「特定空家」について勧告を受けた場合、その敷地が住宅用地特例の対象から外れることがあります。
ただし、
「空き家になったら自動的に固定資産税が何倍にもなる」
という意味ではありません。
管理状態や行政からの措置などが関係するため、個別の状況については、その空き家がある市区町村へ確認することが大切です。
このサイトでも別ページで、管理不全空家・特定空家と税金の関係を詳しく説明します。
空き家について考えるとき、多くの方が最初に気にするのは、
「いくらで売れるのだろう」
という売却価格です。
しかし、まだ売らない場合には、
「持ち続けると、いくらかかるのか」
も同じくらい重要です。
空き家を維持管理する場合には、固定資産税、修繕、保険、光熱費、草木の管理、交通費などを整理して考えることが大切です。
たとえば実家へ年に数回帰っている場合でも、交通費だけを見るのではなく、自分の休日や時間を使っていることも考えてみましょう。
ここで大切なのは、
「空き家にはお金がかかるから今すぐ売りなさい」
ということではありません。
年間にどの程度のお金と時間がかかっているのかがわかれば、
「このまま5年間管理できるか」
「売却したほうが自分の負担は軽くなるか」
という判断がしやすくなります。
空き家売却について検索している方でも、
「本当に売ってしまってよいのだろうか」
と迷っていることがあります。
親が長く暮らした実家なら、なおさら簡単には決められないでしょう。
そこで、最初から売却だけに絞るのではなく、主な方法を比較してみましょう。
| 選択肢 | どのような方法? | 向いている可能性がある人 |
|---|---|---|
| 売る | 不動産を手放して代金を受け取る | 今後使う予定がなく、管理の負担を減らしたい |
| 貸す | 入居者などに使ってもらい賃料を受け取る | 建物を残しながら活用したい |
| 維持・管理する | 所有したまま定期的に管理する | 将来自分や家族が使う可能性がある |
| 土地を活用する | 建物や土地の条件に応じた利用方法を検討する | 売却するか活用するか比較して決めたい |
この4つには、それぞれ良い点と注意点があります。
「どれが一番よいか」ではなく、自分の家と自分の事情にはどれが合うかで考えることが重要です。
今後、自分や子どもが住む予定もなく、空き家を持ち続ける理由が特にない場合は、売却が有力な選択肢になります。
売却すれば、引渡し後は原則としてその不動産を自分で管理し続ける必要がなくなります。
固定資産税や修繕、草木の管理のような将来の負担についても、不動産を手放すことで区切りをつけやすくなります。
特に、
「遠くて管理に行くのがつらくなってきた」
「子どもにこの家の管理を引き継がせたくない」
「家のことで毎年悩み続けたくない」
という方にとって、売却は単にお金を得る方法だけではありません。
空き家を管理し続ける負担から離れるための方法でもあります。
ただし、売却方法には、
仲介(不動産会社に購入希望者を探してもらう方法)
と、
買取(不動産会社などが直接買主になる方法)
などがあります。
どちらが適しているかは、次の記事で詳しく比較します。
空き家を売らず、賃貸(他の人に貸して賃料を受け取ること)として利用する方法もあります。
「親の家を今すぐ手放したくない」
「将来は自分で使うかもしれない」
という場合には検討する価値があります。
ただし、
「貸せば毎月家賃が入るから、売るより得だ」
と単純に考えるのは注意が必要です。
人に貸すためには、建物の状態によって修繕が必要になることがあります。
また、入居者が見つからない期間には、空室(借りる人がいない状態)になる可能性もあります。
契約の種類についても確認が必要です。
通常の賃貸借のほか、一定期間で契約を終了することを前提とした定期借家契約(決めた期間の満了で契約を終了させる仕組み)といった契約などもあります。
「貸したほうが得か」は家賃だけでは判断できません。
修繕費、管理費、空室の可能性などを含めて考える必要があります。
すべての空き家を売る必要はありません。
「定年後に実家へ戻るかもしれない」
「子どもが将来使う可能性がある」
「家族でまだ話し合いが終わっていない」
という場合には、しばらく所有して管理する方法もあります。
その場合に重要なのは、
放置と管理を同じにしないことです。
自分で定期的に確認する方法のほか、遠方などで難しい場合には、空き家管理代行サービス(所有者の代わりに見回りなどを行うサービス)を利用する方法もあります。
「売るか決めるまでの間だけ管理を頼む」
という使い方もできます。
まだ気持ちの整理がつかないときに、無理に結論を急ぐ必要はありません。
ただし、何もせず時間だけが過ぎる状態は避け、考えるための時間と、放置する時間を区別することが大切です。
空き家の建物そのものを残すことだけが活用ではありません。
土地の場所や広さ、周辺の需要によっては、土地として別の使い方を検討できる場合もあります。
ただし、
「空いている土地なら何でもアパートを建てればよい」
「駐車場にすれば必ず利益が出る」
というものではありません。
土地活用には費用がかかることがあり、場所によって向き・不向きもあります。
そのため、
売却した場合
と
土地を活用した場合
の両方を比較してから決めるという考え方もあります。
「親から受け継いだ土地だから、売る前に活用できないかだけでも知りたい」
という方は、土地活用の選択肢を確認してから売却を決めても遅くありません。
空き家の選択肢を比較していると、
「結局、どれを選べばよいのかわからない」
と思うかもしれません。
その場合は、最初から方法を決めるのではなく、自分が何を一番優先したいのかを考えてみてください。
たとえば、
「できるだけ管理の手間を減らしたい」
のであれば、売却が考えやすくなります。
「家を手放したくない」
のであれば、賃貸や維持管理を検討します。
「売ってしまう前に、土地から収入を得られる可能性も知りたい」
のであれば、土地活用と売却を比較します。
そして、
「できるだけ早く空き家を手放したい」
のであれば、仲介だけでなく買取も比較することになります。
方法から考えるのではなく、自分が何を大切にしたいかから考える。
この順番にすると、空き家の今後を決めやすくなります。
不動産会社へ相談すると、
「その場で売却を決めなければならないのでは」
「営業されそうで怖い」
と感じる方もいるでしょう。
しかし、本来は、
「売却するとしたら、いくらくらいなのか」
「今の状態でも売却できるのか」
という情報を集めてから考えることもできます。
査定を受けたからといって、その会社へ必ず売却しなければならないわけではありません。
特に、
「売るか管理するか迷っている」
「古い実家なので売れるのかわからない」
という段階では、まず判断材料を集めることが大切です。
次の記事では、空き家売却の中心となる、
「仲介」と「買取」は何が違うのか
について、価格・時間・手間・向いている人という4つの視点からわかりやすく比較します。