空き家を相続したくない場合の選択肢。相続放棄と相続土地国庫帰属制度

空き家を相続したくない場合に考えられる、相続放棄と相続土地国庫帰属制度について、それぞれの仕組み、期限、費用、注意点を解説します。

この記事の要点

「遠方の実家を相続しても、管理しきれない」。そう考えて、相続そのものを避けたいと考える方もいます。そのための制度はありますが、それぞれに条件や注意点があります。判断を誤らないよう、仕組みを確認しておきましょう。

  • 相続放棄は、相続の開始を知った時から3カ月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。
  • 相続放棄をすると、家だけでなく、預貯金なども含めたすべての財産を相続できなくなります。
  • 相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされ、放棄できなくなることがあります。
  • 相続土地国庫帰属制度は、建物がある土地には使えません。審査手数料と負担金がかかります。

相続の3つの方法

相続人は、亡くなった方の財産をどのように引き継ぐかを選べます。

方法 内容 手続き
単純承認 預貯金も借金も、すべての財産を引き継ぐ 特別な手続きは不要
限定承認 引き継いだ財産の範囲内でのみ、借金を返す 相続人全員で、3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる
相続放棄 一切の財産を引き継がない 各相続人が、3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる

3カ月の期限は、相続の開始を知った時から数えます。

相続放棄の注意点

家だけを放棄することはできない

相続放棄は、すべての財産を一括して放棄する手続きです。「空き家はいらないが、預貯金は受け取りたい」ということはできません。

財産を処分すると、放棄できなくなることがある

相続財産を処分すると、相続を承認したもの(単純承認)とみなされます。相続放棄を考えている場合は、家を売ったり、家財を処分したりする前に、必ず専門家に相談してください。

管理の義務について

2023年4月の民法改正で、相続放棄をした時点で財産を現に占有していなければ、その財産を管理する義務を負わないことが明確になりました。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日から、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度が始まりました。ただし、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではありません。

主な条件

  • 建物がある土地は対象外:空き家が建っている場合は、解体して更地にする必要があります。
  • 申請そのものができない土地:建物がある、抵当権などが設定されている、他人が利用する予定がある、土壌が汚染されている、境界がはっきりしない、といった土地です。
  • 承認を受けられない土地:一定の勾配・高さの崖があって管理に過大な費用がかかる土地や、地上・地下に取り除くべき物がある土地などです。

費用

  • 審査手数料:土地1筆につき1万4,000円
  • 負担金:原則20万円(10年分の管理費用に相当する額。土地の種類や面積によって加算されることがあります)

解体費用も含めると、相応の費用がかかります。売却できる見込みがあるなら、まずは売る方法を検討するのが現実的です。

まずは「売れるかどうか」を確かめる

相続放棄や国庫帰属は、いずれも条件や費用の面でハードルの高い制度です。「どうせ売れない」と思い込まず、まずは不動産会社に相談して、売却の可能性を確かめてみることをおすすめします。古い家でも、買取業者が引き取ってくれる場合があります。
一方、借金が多いなど、相続放棄を検討すべき事情がある場合は、期限が3カ月と短いため、できるだけ早く弁護士や司法書士に相談してください。


よくある質問

Q. 相続放棄をすれば、空き家の管理をしなくてよいのですか?

2023年4月の民法改正により、相続放棄をした時点でその財産を現に占有していなければ、管理の義務を負わないことが明確になりました。ただし、個別の事情によって判断が分かれることもあるため、弁護士や司法書士に相談しましょう。

Q. 国庫帰属制度の手続きは、誰に頼めますか?

法律上、弁護士・司法書士・行政書士が申請書類の作成を代行できます。手続きは簡単とはいえないため、専門家への相談をおすすめします。


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ご注意

法律や税制は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わります。実際の手続きや申告の前に、法務局・市区町村・税務署などの窓口、または弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。