
以前、平均的な家でも年に約23万〜39万円の維持費がかかるという試算をご紹介しました。
では、その家を誰かに貸したらどうなるのでしょうか。「売るのはさびしいけれど、空けておくのももったいない」。実家の空き家について、そんなふうに考えている方は少なくないと思います。
今回は、空き家を「戸建て賃貸」として貸し出す場合について整理します。この記事で分かるのは、次の3つです。
・戸建て賃貸の家賃は、全国でどのくらいか
・貸すことのメリットと、見落としやすいデメリット
・自分の家の家賃相場を、どうやって調べればよいか
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、民営の借家(専用住宅)のうち一戸建ての1か月あたりの家賃は、全国平均で61,583円でした。月約6.2万円、年間にすると約74万円です。
ただし、地域による差はとても大きいです。民営借家全体の平均で見ると、東京都は94,802円、宮崎県は46,290円と、2倍近い開きがあります。

全国平均は、あくまで「出発点」です。実際の家賃は、地域・広さ・築年数・駅からの距離・駐車場の有無などで大きく変わります。調べ方は、この記事の後半でご紹介します。
国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」では、空き家の種類ごとに、約1年のあいだに「空き家でなくなった」割合を調べています。
・使用目的のない空き家:14.8%
・別荘などの二次的住宅:15.4%
・貸家用の空き家:33.1%
・売却用の空き家:31.4%
貸家用として募集していた空き家は、約3割が1年で空き家でなくなりました。その理由の1位は「貸した」で、63.2%を占めています。

一方で、使用目的のない空き家を持っている世帯の今後の意向は、「空き家として所有しておく(物置を含む)」が40.6%で最多でした。
貸すにしても売るにしても、「決めて動いた家」ほど空き家の状態から抜け出しやすい。データからは、そんな傾向が読み取れます。
改修費が200万円なら、回収まで約4年(家賃月6万円の試算)
貸すためには、まず「人が住める状態」にする必要があります。同じ調査では、空き家の7割超(71.8%)に、何らかの腐朽・破損があると回答されています。多くの家で、ある程度の改修費がかかると考えておいたほうがよさそうです。
そこで、改修費を何年で取り戻せるかを試算してみました。
・前提:満室が続く場合
・経費:管理委託料(家賃の5%)、修繕の積立(家賃の10%)、固定資産税等 年10万円、保険 年3万円
・計算式:回収年数 = 改修費 ÷(年間家賃 − 年間経費)

たとえば家賃が月6万円なら、年間の手取り(税引前)は約48万円。改修費が200万円なら約4.1年、300万円なら約6.2年で回収できる計算です。
ただし、これは満室が続いた場合の数字です。入居者が決まるまでの期間や、退去後の空室があると、そのぶん長くなります。また、家賃収入は「不動産所得」として確定申告が必要になり、税金もかかります。金額はすべて、ご自身の見込みや見積もりに置き換えて考えてみてください。
・毎月の家賃収入で、固定資産税などの維持費をまかなえる
・人が住むので換気や通水が行われ、家が傷みにくい
・家を手放さずに残せるので、将来の選択肢が残る
・定期借家にすれば、期間を決めて貸すことができる
最後の「定期借家」は、契約期間が終われば更新されずに終わる契約です。「いずれ自分や子どもが住むかもしれない」という家でも、期間を区切って貸すことができます。

デメリットは「改修費」「契約の縛り」、そして「税の特例」
一方で、事前に知っておきたい注意点もあります。
・住める状態にするための改修費がかかる
・一般的な普通借家契約では、貸主からの解約や更新の拒否に「正当事由」が必要になり、簡単には返してもらえない
・雨漏りや設備の故障など、建物の修繕は原則として貸主の負担になる
・貸すと、相続した空き家を売るときの「3,000万円特別控除」が使えなくなる
特に見落としやすいのが、最後の税の特例です。相続した親の家を売るとき、一定の条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。この特例には「相続のときから売るときまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと」という条件があります。つまり、一度貸してしまうと、この特例は使えません。
適用期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年(2027年)12月31日までの売却です。「数年貸して、そのあと売る」と考えている場合は、貸す前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。
自分の家をいくらで貸せそうかは、次の3つのステップで調べると、幅をしぼりやすくなります。

ステップ1:公的統計で「地域の平均」を知る
総務省の「住宅・土地統計調査」は、政府統計の総合窓口「e-Stat」で、市区町村別・建て方別の家賃を見ることができます。県庁所在市などの毎月の家賃の動きは、総務省の「小売物価統計調査」も参考になります。
ステップ2:賃貸サイトで「似た戸建て」を探す
同じ市区町村で、広さ・築年数・駐車場の有無が近い戸建てを絞り込み、募集中の家賃を5〜10件ほどメモします。募集中の家賃は「希望額」なので、実際に決まる家賃はこれより下がることもあります。
ステップ3:不動産会社に「賃料査定」を頼む
地元の会社を中心に2〜3社へ相談します。家賃の見込みだけでなく、「貸すためにどこまで直す必要があるか」も一緒に聞いておくと、前半の回収年数の試算に当てはめられます。
あわせて、国土交通省の無料サイト「不動産情報ライブラリ」も役立ちます。ハザードマップや学校区、将来の人口推計などを地図で重ねて見られるので、「この地域で借り手が見つかりそうか」を考える材料になります。
貸すか、売るか、しばらく持っておくか。どれが正解かは、家の状態や立地、家族の事情によって違います。ただ、データを見ると、決めずに空き家のまま置いておく時間にも、維持費や傷みという「コスト」がかかっていることが分かります。
・e-Statで、実家のある市区町村の家賃を調べてみる
・賃貸サイトで、近くの似た戸建ての家賃を5件メモする
・「貸す」と「売る」の両方で、不動産会社に査定を頼んでみる
・相続した家なら、3,000万円特別控除の期限と条件を確認する
「貸す」の数字と「売る」の数字を並べてみるだけでも、家族で話し合うときの大きな手がかりになります。
__________
■出典
・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」表130-2(2024年9月25日公表)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search?toukei=00200522
・公益財団法人生命保険文化センター「住む地域などによって家賃はどのくらい違う?」(上記統計の整理)
https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/10111.html
・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査の調査結果」結果のポイント(2025年8月29日公表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html
・国土交通省「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)をご存じですか」
https://www.mlit.go.jp/common/001170116.pdf
・国土交通省「DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブックについて」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000046.html
・国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
・総務省統計局「借家の家賃」(統計FAQ 18A-Q19)
https://www.stat.go.jp/library/faq/faq18/faq18a19.html
・国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
※家賃は、民営借家(専用住宅)のうち家賃0円を含まない1か月あたりの平均です。都道府県別の数値(東京都・宮崎県)は、建て方を問わない民営借家全体の平均です。
※「空き家でなくなった割合」は、2023年10月1日から2024年12月1日までの変化です。
※改修費の回収年数は筆者の試算です。家賃・経費はすべて仮定の値で、空室期間・所得税・住民税は考慮していません。
※3,000万円特別控除には、昭和56年5月31日以前の建築であること、売却代金が1億円以下であることなど、ほかにも条件があります。適用できるかどうかは、税務署や税理士にご確認ください。
※改修費を借り手が負担する「DIY型賃貸借」という方法もあり、国土交通省が契約書式例とガイドブックを公開しています。
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