相続した実家の「権利証」が見つからない。でも相続登記はできます

実家の「権利証」が見つからなくても、相続登記はできます。権利証(登記識別情報)とは何か、相続登記に不要な理由、売るときに使える3つの代わりの方法を解説します。

権利証(登記識別情報)が無い場合

親が亡くなって実家を相続した。いざ手続きを始めようとしたら、「権利証」がどこにも見当たらない。仏壇の引き出しも、タンスの奥も探したけれど出てこない。こうした相談はとても多いです。

権利証がないと家を相続できないのでは、と不安になる方もいます。でも、結論から言うと、相続の名義変更(相続登記)は権利証がなくてもできます。この記事では、公的な資料をもとに「権利証が本当に必要になるのはいつか」と「見つからないときの具体的な対処法」を整理します。

空き家の約6割は「相続」で手に入れた家

まず前提として、空き家と相続は切っても切れない関係にあります。

国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」によると、空き家を手に入れた経緯は「相続」が57.9%で最も多くなっています。空き家になったきっかけも、所有者の「死亡」が58.3%です。

さらに、相続した空き家の所有世帯のうち77%は、相続前に特に対策をしていませんでした。親が元気なうちに「権利証はどこにある?」と聞けていないケースが多いのも、無理はありません。

権利証とは?今は「登記識別情報」という12桁の符号

「権利証」は通称で、正式には次の2種類があります。

・登記済証:2005年ごろまでに登記した不動産で交付された紙の書類。「登記済」の赤いはんこが押された冊子のような形が多いです

・登記識別情報通知:それ以降に交付されている書類。12桁の英数字(パスワードのようなもの)が、目隠しシールで隠されたA4の紙です

どちらも「この人が本当に持ち主だ」と法務局が確かめるための、本人確認の書類です。家そのものの所有権を表す書類ではありません。

法務省も、権利証をなくしたことで不動産の所有権を失うことはない、と案内しています。なくしただけで、勝手に名義を変えられるわけでもありません。登記には印鑑証明書などの本人確認書類も必要だからです。

相続登記には、権利証は原則いりません

相続登記は、亡くなった人の名義を相続人の名義に変える手続きです。このとき必要なのは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、住民票の除票、相続人の戸籍や住民票など、「相続があったこと」を証明する書類です。法務局が案内している必要書類にも、権利証は入っていません。

ただし例外もあります。遺言で相続人以外の人が家を受け取る「遺贈」の場合などは、権利証が必要になることがあります。

権利証が必要な場面


権利証が本当に必要になるのは、相続した家を「売る」とき、あるいはお金を借りて「担保に入れる」ときです。このときは、相続登記の後に新しく届く登記識別情報を使います。

つまり、今見つからないのが親の代の古い権利証なら、相続登記はそのまま進められます。大切なのは、相続登記の後に届く新しい書類をなくさないことです。

相続登記は義務になり、手続きは増えている

2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

それより前の相続で、まだ名義を変えていない家も対象です。この場合の期限は、原則2027年3月31日です。

相続登記の件数と義務化

法務省によると、相続登記の件数は令和2年度の約114万件から、令和5年度には150万件を超えました。義務化後の令和6年度も、4〜12月の9か月で約120万件と、前年同期より約9%増えています。

義務化の背景には、登記簿を見ても持ち主がすぐ分からない「所有者不明土地」の問題があります。その割合は国土の約24%にのぼり、原因の63%が相続登記の未了とされています(2020年 国土交通省調査)。

なくしても大丈夫。売るときの「代わりの方法」は3つ

権利証(登記識別情報)は、理由を問わず再発行されません。ただ、売却などで必要になったときは、代わりの方法が法律で用意されています。

失くしたときの3つの方法

・事前通知制度:法務局から本人限定の郵便が届き、原則2週間以内に返送して本人の意思を確認します。手数料はかかりませんが、時間がかかるため、売買の決済日に合わせにくい方法です

・本人確認情報:司法書士が本人と面談し、本人であることを確認した書類を作ります。費用は数万〜十数万円程度が民間の目安で、売却のときによく使われます

・公証人の認証:公証役場で本人確認の認証を受ける方法です。自分で登記を申請する人向けです

なお、盗まれた・人に見られた恐れがあるときは、法務局に「不正登記防止申出」や「失効の申出」をする方法もあります。

権利証がないことで、売却そのものができなくなるわけではありません。ただ、費用や日数が少し増えることは知っておくと安心です。

まずは「探す・確かめる」から

今日いまから出来ること

・家の中を探す:仏壇、金庫、貸金庫、親の書類箱。「登記済」の冊子や、目隠しシールの付いたA4の紙が目印です

・名義を確かめる:法務局で登記事項証明書を取り、今の名義が亡くなった親のままかを確認します

・ほかの不動産も洗い出す:2026年2月に始まった「所有不動産記録証明書」で、親の名義の不動産を全国から一覧にできます(書面請求は検索条件1件につき1,600円)

・期限を確認する:2024年4月より前の相続で未登記なら、原則2027年3月31日までです

実家をどうするかは、住む・貸す・売る・残すなど、家庭ごとに答えが違います。どれが正解というものはありません。

ただ、名義が親のままだと、いざ売りたい・貸したいと思ったときにすぐには動けません。前回お伝えしたとおり、空き家は持っているだけで毎年費用がかかります。「決める」前に、まず名義と書類を整えておく。それだけで、将来の選択肢がぐっと広がります。

__________

■出典

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」(2025年8月29日公表)

https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html

・法務省「令和8年熊本地震により土地・建物の権利証(登記済証・登記識別情報通知書)を紛失した場合について」(2026年7月29日)

https://www.moj.go.jp/content/001467740.pdf

・法務省 法務大臣閣議後記者会見の概要(2025年4月4日)

https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00603.html

・法務局資料「所有者不明土地の割合(2020年国土交通省調査)」

https://houmukyoku.moj.go.jp/nagasaki/content/001404398.pdf

・法務省「所有不動産記録証明制度について」

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html

・法務省「相続登記の申請義務化に関する概要資料」

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00600.html

※「権利証」は、登記済証と登記識別情報通知の通称として使っています。

※相続登記の期限は「相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内」。2024年4月1日より前の相続は、原則2027年3月31日まで。正当な理由がある場合は過料の対象になりません。期限内に難しい場合は「相続人申告登記」という簡易な方法もあります。

※事前通知の返送期限は、海外に住んでいる人は4週間です。

※本人確認情報・公証人認証の費用は、司法書士事務所や公証役場、事案によって異なります。数字は民間の公開情報による目安です。

※所有不動産記録証明書は、請求書の氏名・住所が登記簿と一致する不動産だけが抽出されます。引っ越しや旧姓がある場合は、旧住所・旧氏名でも検索してください。

※個別の判断は、最寄りの法務局(手続案内は予約制)や司法書士にご相談ください。

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