
「そろそろ実家をどうするか考えないと」と思っても、いきなり不動産会社に電話するのは少し身構えますよね。何を聞かれるのか、何を持っていけばいいのか分からないと、つい後回しになりがちです。
この記事では、相談前にそろえておきたい書類と、実家で見ておきたいポイントをチェックリストにまとめました。売ると決めていなくても使える内容です。
国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査」によると、空き家の57.9%は相続で取得されたものでした。
相続した空き家に絞ると、1980年以前に建てられた住宅が73.2%。さらに、構造上の不具合や部分的な傷みなど、何らかの腐朽・破損がある家が71.8%にのぼります。
一方で、相続の前に何か対策をしていた世帯は23.0%にとどまります。対策の中身でいちばん多いのも「親との話し合い」で、書類の整理まで進んでいる家庭は多くないと考えられます。
つまり、多くの人が「古くて、どこか傷んでいて、書類の場所もよく分からない家」を、準備のないまま引き継いでいるということです。

同じ調査では、相続前の対策の有無で、その後の空き家の扱いに差が出ています。
対策をしていなかった空き家は、売る・貸す・住む・解体するといった予定がないまま「空き家として所有していた」割合が45.1%。対策をしていた空き家の29.4%と比べて、約1.5倍です。
もちろん、対策をしたから必ず動けるとは限りません。ただ、「何があるか分からない」状態は、家族で話し合うときも、専門家に相談するときも、最初の一歩を重くします。
書類と家の状態を把握しておくことは、売るかどうかを決めるための準備ではなく、「決められる状態」をつくるための準備だと考えると気が楽です。
不動産会社や専門家に相談するときに役立つ書類を、表にまとめました。全部そろっていなくても相談はできます。まずは「まず」の印がついた4つを目安にしてください。

それぞれの書類の役割を、かんたんに補足します。
・登記事項証明書(登記簿):土地や建物の名義人、面積、ローンの担保がついているかなどが分かります。法務局の窓口で1通600円、オンラインで請求すると490円(窓口受取)または520円(郵送受取)です。
・固定資産税の納税通知書:毎年春ごろ市区町村から届きます。評価額や税額のほか、土地・建物の地番や家屋番号も書かれていて、登記簿を請求するときの手がかりになります。
・権利証(登記識別情報):所有者であることを示す大切な書類です。仏壇や金庫、タンスの引き出しなどにしまわれていることが多いです。
・遺言書・遺産分割協議書など:誰がこの家を相続するのかを示す書類です。名義が決まっていないと、売ることも貸すこともできません。
・購入時の売買契約書・領収書:売ったときの税金の計算に使います。買ったときの費用(取得費)が分からない場合は、売った金額の5%を取得費として計算するしくみがあります。ただ、実際にかかった費用より小さくなりやすく、そのぶん税金が多くなることがあります。古い書類でも捨てずに残しておきましょう。
・建築確認済証・検査済証・図面:建物が法律に沿って建てられたかを示す書類で、買い手の安心材料になります。
名義と書類には「期限のある制度」が関係する
書類集めを急ぎたい理由が、もう1つあります。期限のある制度が2つ関わってくるからです。
1つめは、2024年4月1日に始まった相続登記の義務化です。不動産を相続したことを知った日から3年以内に、名義を変える登記をする必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。2024年4月1日より前の相続で、まだ登記をしていない場合も対象で、期限は2027年3月31日です。
2つめは、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除です。一定の条件を満たせば、売って出た利益から最大3,000万円を差し引けます。対象は2027年12月31日までの売却で、かつ「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売る必要があります。家が1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられていることなどの条件があり、相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円になります。
この控除を使うには、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」なども必要です。どちらの制度も、名義と書類がそろっていないと先に進めません。

実家で見ておきたいのは13のポイント
書類と並んで大切なのが、家そのものの状態です。直す必要はありません。「今どうなっているか」を知って、写真に残しておくことが目的です。

見るときのコツをいくつか挙げます。
・建物:天井のしみや床のきしみは、雨漏りや土台の傷みのサインになりやすいです。気になる場所は、日付が分かるように写真を撮っておきましょう。
・設備:水道・電気・ガスの契約が続いているかで、内覧のしやすさや管理の手間が変わります。
・敷地:境界を示す杭やプレート(境界標)が見当たらない場合は、売るときに測量が必要になることがあります。早めに分かっていれば、段取りが組みやすくなります。
・室内:家財や遺品の量は、片づけの費用や期間に直結します。仏壇や貴重品の扱いは、家族で先に話しておくと安心です。
相談のときに写真と書類があれば、不動産会社もおおよその状況をつかみやすく、話が具体的になります。
まずは「書類のありか」を確かめることから
売るか、貸すか、しばらく持っておくか。どれが正解かは、家族の事情や家の状態によって違います。
ただ、調査データを見ると、相続した実家の多くは古く、傷みがあり、準備がないまま「そのまま空き家」になりやすいことが分かります。決めないまま時間が過ぎると、維持費がかかり続け、制度の期限も近づいてきます。
・固定資産税の納税通知書を探して、地番と家屋番号を確認する
・登記簿をオンラインで1通取り寄せて、名義が誰になっているかを見る
・権利証や売買契約書がありそうな場所を、家族に聞いてみる
・次に実家へ行くとき、チェックリストを持って各部屋の写真を撮る
これだけそろえば、不動産会社への最初の相談はぐっと具体的になるはずです。
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■出典
・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」(2025年8月29日公表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907435.pdf
・国土交通省 報道発表資料「令和6年空き家所有者実態調査の調査結果」(2025年8月29日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html
・法務省「相続登記の申請義務化に関するQamp;A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
・法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」
https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html
・法務省「登記事項証明書等のオンライン請求」
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/000153605.html
・国税庁「被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡に係る特例」(確定申告の手引き 令和7年分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kakikata/05/tokurei.htm
・国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)について」
https://www.mlit.go.jp/common/001284878.pdf
※「1980年以前の建築」は調査の「1950年以前」「1951〜1970年」「1971〜1980年」の合計、「腐朽・破損あり」は「構造上の不具合あり」「全体的な腐朽・破損あり」「部分的な腐朽・破損あり」の合計です。
※「そのまま空き家」の割合は、相続空き家のうち、売却・賃貸・居住・解体などの意向がなく「空き家として所有していた」割合です。対策の有無と結果の関係を示すもので、因果関係を示すものではありません。
※書類のリストと実家のチェック項目は、相談準備の一般的な目安です。物件や相続の状況によって必要な書類は異なります。
※3,000万円特別控除には、このほかにも譲渡価格1億円以下、相続開始の直前に被相続人以外が住んでいなかったことなどの要件があります。適用できるかは、税務署または税理士にご確認ください。相続登記は法務局や司法書士に相談できます。
※登記事項証明書の手数料は2025年4月1日改定後の金額です。
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