親の家がモノだらけ…実家の片付け・遺品整理は「捨てる」より先に「決めて・探す」

空き家が残る理由の1位は「物置として必要」。実家の片付けや遺品整理は「捨てる」より先に「決める」「探す」が大切です。進め方と今日からできる4つのことを紹介します。

空き家が空き家のまま残る理由の1位は「物置として必要」

以前、空き家を持っているだけでかかる維持費を試算しました。平均的な家で年約23万〜39万円。そのお金が、片付かないまま毎年出ていきます。

「売るか残すかを考える前に、まず実家の中を何とかしないと…」

そう感じている方は多いのではないでしょうか。押し入れ、納戸、物置、2階の一部屋。親が何十年も暮らした家には、驚くほどのモノがあります。

実は国の調査でも、空き家が空き家のまま残る理由の1位は「物置として必要」でした。

この記事では、国土交通省などのデータで「モノ」が空き家に与える影響を確かめたうえで、実家の片付け・遺品整理を効率よく進める手順を5つにまとめます。

この記事で分かること

・空き家を持ち続ける理由と、その中で「モノ」が占める大きさ

・売る・貸すときに「家財」がどれくらい壁になっているか

・片付けを始める前に気をつけたい、相続の「3か月」

・業者に頼むときのトラブルと、確認したいポイント

空き家のまま残る理由、1位は「物置として必要」(55.8%)

国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査」では、今後5年程度、空き家のまま持ち続けるつもりの世帯に、その理由を聞いています(複数回答)。

最も多かったのは「物置として必要」で55.8%。2位の「解体費用をかけたくない」(47.3%)を上回りました。

さらに「仏壇など他に保管場所がないものがある」(21.6%)、「家財などの処理が困難」(21.6%)も上位に入っています。

空き家を持ち続ける理由

いちばん大きな理由を1つだけ選んでもらった結果でも、「物置として必要」が30.4%で最多でした。

つまり、空き家の多くは「住まない家」ではなく「モノを置いている家」になっています。

中にある物が決まらない限り、家をどうするかも決めにくい。片付けは、空き家の将来を考えるための入り口だといえます。

売る・貸すと決めても、3人に1人以上が「家財」でつまずく

では、売却や賃貸を考えている人はどうでしょうか。

同じ調査で、今後5年程度で売る・貸すつもりの世帯に課題を聞くと、「家財などの処理」が37.4%でした。「住宅の傷み」(43.3%)、「借り手・買い手の少なさ」(40.3%)に次ぐ3番目です。

売却賃貸の課題=家財

「住宅の傷み」や「買い手の少なさ」は、自分たちの努力だけでは変えにくい課題です。

一方で「家財」は、手順を決めて動けば確実に減らせます。売る・貸すの話を進めるうえで、いちばん手をつけやすい課題でもあります。

片付けを始める前に。相続の「3か月」に注意

ここで1つ、片付けの前に確認したいことがあります。相続の方針です。

相続人は、原則として「自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内」に、相続するか、相続放棄するか(または限定承認)を決めます(民法915条)。この期間は、家庭裁判所に申し立てて延ばしてもらえる場合があります。

注意したいのは、この判断の前に親の財産を「処分」すると、相続を認めた(単純承認)とみなされることがある点です(民法921条)。そうなると、あとから借金が見つかっても相続放棄ができなくなるおそれがあります。

借金の有無がはっきりしない場合や、相続放棄を少しでも考えている場合は、

・価値のありそうな物を売る・持ち帰る

・家財を一気に処分する

といった行動は、方針が決まるまで控えるのが安全です。どこまでなら問題ないかは事情によって変わるため、迷ったら弁護士や司法書士に相談してください。

効率よく進める5つの手順

相続の方針が見えてきたら、いよいよ片付けです。ポイントは「捨てる」より先に「決める」と「探す」を済ませること。順番を守るだけで、やり直しや家族のもめごとが減ります。

片付けの5つの手順

1. すぐには捨てない

前の見出しのとおり、相続の方針が決まるまでは大きな処分を控えます。

2. 家族で「方針」を決める

いつまでに終えるか、誰が作業するか、費用をどう分けるか。兄弟姉妹がいる場合は、形見として残したい物を先に聞いておくと、あとで「捨てられた」というもめごとを防げます。

3. 貴重品と書類を先に探す

通帳、不動産の権利証、保険や年金の書類、各種の契約書、鍵、写真など。見つけた物は1か所に集めます。ここで見つかる書類が、相続の手続きや家の売却にも必要になります。

4. 部屋ごとに4つに分ける

「残す・譲る・売る・捨てる」に分けます。迷う物は「保留箱」に入れ、見直す日を決めておくと、手が止まりません。一度に家全体をやろうとせず、1部屋ずつ終わらせるのがコツです。

5. 残りは市区町村か許可業者へ

粗大ごみの出し方や、家電4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)のルールは市区町村ごとに確認します。量が多く自分たちで運べない場合は、業者に頼むことになります。

業者に頼むなら「許可」と「見積もり」を確認

業者に頼むこと自体は、時間や体力を考えれば十分に合理的な選択です。ただし、トラブルも増えています。

国民生活センターによると、不用品回収サービスに関する相談は2018年度の1,354件から2021年度は2,231件へ、3年で約1.6倍になりました。

不用品回収トラブル相談件数

家庭から出るごみを運べるのは、市区町村の「一般廃棄物処理業」の許可を持つ業者か、市区町村から委託を受けた業者です。「産業廃棄物」の許可だけでは、家庭のごみは運べません。

国民生活センターは、遺品整理サービスでも「見積もりの2倍を請求された」「残すよう頼んだ物を処分された」といった相談事例を紹介し、次のような点を勧めています。

・複数の業者から見積もりを取る

・作業内容、料金、追加料金、キャンセル料を事前に確認する

・残す物と処分する物を、はっきり分けておく

・困ったときは消費者ホットライン「188」に相談する

手順4で「残す物」を決めておくことは、業者トラブルの予防にもなります。

まずは「探す」から

実家の片付けは、気持ちの整理も伴う作業です。一気に終わらせなくてかまいません。

ただ、データが示すように、モノが片付かないことが「空き家のまま」の大きな理由になっています。そのあいだにも、前回お伝えした維持費や家の傷みは進んでいきます。

残すか、売るか、貸すか。どれが正解かは家庭によって違います。だからこそ、選べる状態にしておくことが大切です。

今日できることは、たとえば次の4つです。

・相続の方針(相続するか、放棄も考えるか)を家族で確認する

・通帳・権利証・保険証券など「探す物リスト」を作る

・片付けの期限と、作業する人・費用の分け方を話し合う

・市区町村のホームページで、粗大ごみのルールと許可業者の一覧を確認する

片付けが進めば、家の傷み具合も見えてきます。そこで初めて「この家をどうするか」を、具体的に考えられるようになります。

__________

■出典

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月29日公表)

 https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html

・国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」(2022年11月2日公表、11月11日更新)

 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html

・国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日公表)

 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180719_1.html

・裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html

・民法 第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)、第921条(法定単純承認)

※「空き家として所有しておく理由」は、令和6年12月1日時点で空き家であり、今後5年程度「空き家として所有しておく(物置含む)」意向の世帯(推計約32万3千世帯)への複数回答です。

※「賃貸・売却する上での課題」は、今後5年程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯(推計約25万1千世帯)への複数回答です。

※不用品回収サービスの相談件数は、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含みません。「約1.6倍」は2,231件÷1,354件で計算しています。

※相続放棄・単純承認に当たるかどうかは個別の事情によって判断が分かれます。具体的な判断は弁護士・司法書士、熟慮期間の延長は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所にご確認ください。

※ごみの出し方や許可業者は市区町村によって異なります。お住まいの(実家のある)市区町村の案内をご確認ください。

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