
実家や相続した家について、こう感じている方は多いと思います。以前の記事では、空き家は持っているだけで年に約23万〜39万円かかるという試算を紹介しました。「では売ればいいのか。でも、こんな古い家が売れるのか」というのが、今回のテーマです。
・築40年を超える家は、実際にどのくらい売れているのか
・売れる空き家と、動かない空き家では何が違うのか
・古さは変えられなくても、変えられることは何か
まず前提として、空き家の多くはもともと古い家です。
国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査」によると、空き家の約6割(63.2%)が1980年以前に建てられた家でした。相続で受け継いだ空き家に限ると、7割を超えます。
傷みも珍しくありません。外観や室内のどこかに傷みがある空き家は約46%、柱の傾きや雨漏りなど構造上の不具合がある空き家も約20%ありました。
つまり「古くて傷んでいる」のは、あなたの実家だけではありません。空き家ではむしろ普通のことです。問題は、そうした家に買い手がつくのかどうかです。

築41年以上でも、平均2,105万円で売れている
首都圏(1都3県)で中古の一戸建てが実際にいくらで売れたかを、築年数ごとにまとめたデータがあります。不動産会社が使う物件情報システム「レインズ」を運営する、東日本不動産流通機構の集計です。
2024年の結果では、築41年以上の家の平均成約価格は2,105万円でした。築36〜40年は2,791万円、築31〜35年は2,964万円です。

また、2024年に首都圏で売れた中古一戸建てのうち、築40年を超える家は12.3%。およそ8軒に1軒です。2021年は10.3%だったので、古い家が売れる割合はむしろ少しずつ増えています。
ただし、注意点があります。首都圏は土地の値段が高いため、価格の多くは「建物」ではなく「土地」の値段です。築40年を超えた木造住宅は、建物の価値がほとんど残っていないと見られることも多く、買い手は「土地」や「立地」にお金を払っていると考えた方が実態に近いでしょう。
地方では金額の水準は大きく下がります。それでも、「築40年を超えたら売れない」わけではないことは、データからはっきり言えます。
では、同じ古い空き家でも、動くものと動かないものの差はどこにあるのでしょうか。
先ほどの国土交通省の調査では、2023年10月から2024年12月までの約1年の間に、空き家でなくなった(売れた・貸した・取り壊したなど)割合を、条件ごとに調べています。

・駅から200〜500m未満の空き家は22.7%が解消。2,000m以上は13.9%
・管理が「ほぼ毎日」の空き家は26.1%が解消。「数年に1回」は10.5%
・傷みがない空き家は20.1%が解消。構造上の不具合がある空き家は14.0%
建築時期で見ると、1950年以前の家は14.0%、2011年以降は31.7%で、古い家ほど動きにくいのは確かです。
ただ、ここで注目したいのは「管理の頻度」の差です。ほぼ毎日管理されている空き家と、数年に1回しか見に行かない空き家では、解消した割合に2倍以上の差がありました。建物の古さは変えられませんが、管理は今日から変えられます。
もう1つ、はっきりした数字があります。「売却用」として買い手を募集していた空き家は、約1年で31.4%が空き家でなくなり、その理由の75.8%が「売却した」でした。古い家でも、売りに出せば一定の割合で動いていることが分かります。
一方で、売りたい・貸したいと考えている人が、何につまずいているのかも調査されています。

課題の上位は「住宅の傷み」43.3%、「借り手・買い手の少なさ」40.3%、「家財などの処理」37.4%、「設備や建具の古さ」34.0%でした。「どうすればよいか分からない」も21.4%あります。
そして、今後5年程度のうちに売る・貸す意向がある世帯のうち、48.4%は「まだ何もしていない」と答えています。
また、建物ではなく土地の条件で売りにくくなるケースもあります。課題に「再建築不可(道路付けの悪さなど)」を挙げた世帯は7.6%でした。建築基準法では、原則として幅4m以上の道路に2m以上接していない土地には家を建て替えられません。この条件に当たるかどうかは、古家の売りやすさを大きく左右します。
ここまでのデータを、売る側が確認できるポイントに整理しました。

1. 立地:駅や生活圏に近い
2. 管理:見回りや換気を続けている
3. 道路:建て替えができる土地である
4. 価格:相場に合わせて決めている
5. 片付け:家財を処分できている
6. 動き出し:実際に売りに出して相談している
1と3は土地の条件なので、あとから変えるのは難しい部分です。一方、2・4・5・6は持ち主の行動で変えられます。
価格について補足すると、買い手が見つからない場合の対応として最も多かったのは「価格を下げる」で45.5%でした。古家は「建物の価値」ではなく「土地として、または手を入れて住む家として」見られることが多いため、最初から相場に合った価格で出す方が、結果的に早く決まりやすくなります。
また、安い物件は不動産会社が扱いたがらない、という声もこれまではありました。2024年7月からは、800万円以下の物件の仲介手数料の上限が引き上げられ(最大33万円・税込)、安い古家でも相談を受けてもらいやすくなっています。
さらに、1981年5月31日以前に建てられた親の家を相続して売る場合には、条件を満たすと売却益から最大3,000万円を差し引ける特例もあります(前回の記事でも紹介しました)。古い家であることが、税金の面ではかえって有利に働くこともあるのです。
古い家をどうするかは、家庭によって正解が違います。思い出のある家を残したい、いずれ誰かが住むかもしれない、という考えも大切です。
ただ、データから見えるのは、古さそのものより「放っておく時間」の方が売れにくさにつながりやすい、ということです。管理の間隔が空くほど傷みは進み、空き家が動く割合も下がっていました。
決めるのはあとでも構いません。まずは次のようなことから始めてみてください。
・家の様子を見に行き、傷みや家財の量を写真に残す
・家の前の道路の幅と、敷地が道路にどれだけ接しているかを確認する
・近くで似た古家や土地がいくらで売れているか、相場を調べてみる
・不動産会社に「売るとしたら」の査定だけ頼んでみる(売ると決めなくて大丈夫です)
「売れるかどうか」は、調べてみると意外と早く分かります。知ったうえで、残すのか、貸すのか、売るのかを家族で話し合う。それだけでも、今より一歩前に進めるはずです。
__________
■出典
・東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」(2025年2月25日公表)
数値はR.E.port掲載の記事(三菱UFJ不動産販売「住まい1」に転載)より
https://www.sumai1.com/useful/plus/news_00675.html
築40年超の比率はノムコム掲載記事より https://www.nomu.com/news/20250226.html
・東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」(2022年2月25日公表)
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202202.pdf
・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月29日公表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html
報告書 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907491.pdf
・国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(2024年7月1日施行)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
・国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
※築年帯別の成約価格と構成比率は、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の中古一戸建ての数値です。価格には土地の価格が含まれます。地方では金額の水準が大きく異なります。
※「空き家でなくなった割合」は、令和5年10月1日時点で空き家だった住宅が、令和6年12月1日時点で空き家でなくなった割合です。理由には売却のほか、賃貸、取り壊し、所有者や親族の入居なども含みます。
※国土交通省の調査は、空き家を所有する世帯へのアンケートを拡大推計したもので、比率を見るための数値です。
※仲介手数料の特例は、売買価格(税抜)800万円以下の土地・建物が対象で、媒介契約の前に報酬額を説明し、依頼者の合意を得ることが条件です。
※3,000万円特別控除は、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象で、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であること、耐震基準への適合または取り壊しなどの条件があります。相続人が3人以上の場合は1人あたり最大2,000万円です。2026年10月時点の情報です。適用できるかは税務署や税理士に確認してください。
※再建築の可否(接道の条件)は、敷地や道路の状況によって例外もあります。市区町村の建築指導の窓口で確認できます。
← 前の記事(第19回)
親の家がモノだらけ…実家の片付け・遺品整理は「捨てる」より先に「決めて・探す」
次の記事(第21回) →
空き家の売り出し価格の決め方!「高値チャレンジ」と「早期売却価格」のメリット・デメリット