「年5万円未満」が半数。それでも空き家が傷む理由を、維持費の内訳から考える

空き家の維持費は内訳で見ると年約12万〜39万円。それでも所有者の約5割は年5万円未満です。数字の差から、空き家が傷んでいく理由と自分の家の費用の調べ方を考えます。

空き家の維持費の内訳

以前の記事では、空き家の維持費を延べ床面積から試算し、平均的な家で「年約23万〜39万円」かかることを紹介しました。

この数字を見て、「うちはそんなにかかっていない気がする」と感じた方もいるかもしれません。実際、税金は春、保険は更新月、電気や水道は毎月と、支払いがバラバラなので、1年分を合計して見る機会はあまりありません。

そこで今回は、維持費を「税金」「火災保険」「電気・水道」「草刈り」「交通費」の項目に分けて、それぞれ公的な資料や公表されている料金をもとに試算しました。あわせて、国土交通省の最新調査から、実際の所有者が年にいくら払っているかも見ていきます。

この記事で分かること

・空き家の維持費の項目別の目安

・実際の所有者が払っている金額の分布

・「安く済ませる」ことの落とし穴

・自分の家の金額を確かめる方法

内訳で見ると、年約12万〜39万円

まず、空き家1軒にかかる費用を項目ごとに試算しました(修繕費は含みません)。

内訳

・税金(固定資産税・都市計画税):年約2.8万〜10.1万円
・火災保険:年約3万〜6万円

・電気(基本料金+少しの使用):年約0.8万〜1.8万円

・水道(基本料金):年約0.6万〜4万円

・草刈り:年約2.1万〜5.1万円

・交通費(見回り):年約2.4万〜12万円

合計すると、年約12万〜39万円です。前回の試算とは計算の仕方が違いますが、多めのケースはほぼ同じ水準になりました。

幅が大きいのは「税金」と「交通費」です。税金は土地の評価額や、都市計画税がかかる地域かどうかで変わります。交通費は、空き家が近いか遠いかで大きく変わります。国土交通省の調査では、所有者の住まいから空き家まで車や電車で1時間を超える人が約23%います。

税金と保険は、使わなくても毎年かかる

項目の中でも、税金と火災保険は「家を使っても使わなくても」かかる費用です。

固定資産税は、土地と建物の評価額に1.4%(標準税率)をかけて計算します。市街化区域なら、さらに都市計画税(上限0.3%)がかかります。

住宅が建っている土地は、200㎡までの部分の課税標準(税金を計算するもとになる額)が6分の1になる「住宅用地の特例」があります。空き家でも、住宅として使える状態なら原則この特例が続きます。

ただし、管理が行き届かず市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として勧告を受けると、この特例が外れます。今回の前提では、土地の固定資産税は単純計算で年約3.5万円から約21万円になります(実際の税額は負担調整措置などで変わります)。

火災保険も見落としやすい項目です。人が住まなくなった家は、住宅ではなく店舗などと同じ「一般物件」として扱われることがあり、保険料が上がったり、加入できる保険会社が限られたりします。地震保険を付けられないケースもあります。今回は年3万〜6万円と置きましたが、ここはご自身の保険証券の金額に置き換えてみてください。

電気は11月から基本料金が上がる

電気と水道は、使わなくても基本料金がかかります。

東京電力エナジーパートナーは、2026年11月1日から従量電灯Bなどの基本料金を見直します。30A契約の場合、月935.25円から月1,176.18円に上がります(税込)。年間では約2,900円の負担増です。

空き家で電気を使うのは、見回りのときの照明や掃除機くらいという方も多いはずです。新しい料金では、30Aから10Aに下げると、基本料金だけで年約9,400円の差になります(試算)。ただし、防犯カメラや換気扇を動かしている場合は、必要な容量を電力会社に確認してください。

水道の基本料金は自治体によって大きく違います。今回の試算では、茨城県土浦市の家事用(月495円)から長野県営水道の口径20mm(月3,313円)までの幅で計算しました。お住まいの地域の料金表で確かめてみてください。

実際の所有者は、約5割が年5万円未満

ここまでの試算に対して、実際の所有者はいくら払っているのでしょうか。

国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月公表)では、空き家の年間の維持管理費をたずねています。この「費用」には、管理委託料、電気・ガス・水道などの契約費用、交通費、税金などが含まれると定義されています。

実態

結果は、5万円未満が約5割、10万円以上が約3割でした。「費用はかかっていない」という回答も12.1%あります。
試算よりずいぶん少なく見えますが、この調査には別荘や貸家用、売却用の空き家も含まれます。また、地方の古い家は評価額が低く、税金が少ないこともあります。「意外と安い」と感じたなら、それは悪いことではありません。

ただし、同じ調査には気になるデータもあります。

安く済ませた家ほど、傷みが進んでいる

調査では、管理の頻度ごとに「構造上の不具合」が出ている空き家の割合も集計しています。構造上の不具合とは、屋根の変形、壁や柱・床の傾き、雨漏りによる天井裏の著しい腐朽などのことです。

管理回数と傷み

月に1回以上見に行っている空き家では、構造上の不具合がある割合は約15〜18%です。これが「年に1〜数回」になると24.3%、「数年に1回」では33.3%に上がります。

さらに、構造上の不具合が出ている空き家では、年間の維持管理費が5万円未満の割合が約7割でした。不具合のない空き家では約4割です。

もちろん、費用が少ないから傷んだのか、傷んでいるからお金をかけなくなったのか、このデータだけでは分かりません。それでも、「お金も手間もかけていない家ほど傷んでいる」傾向ははっきり出ています。

傷みが進むと、売るときや貸すときの選択肢が狭まります。同じ調査では、賃貸・売却するうえでの課題の1位が「住宅の傷み」(43.3%)でした。維持費を削ることが、結果として家の価値を下げることにつながりやすいのです。

まずは手元の書類で、自分の家の数字を

ここまでの金額は、あくまで前提を置いた試算です。大事なのは、ご自身の空き家に「いま実際にいくらかかっているか」を知ることです。

大体の数字を出してみる

今日からできることを挙げます。

・固定資産税の納税通知書と課税明細書を出して、税額と「住宅用地」の記載を確かめる

・火災保険の証券を見て、空き家であることを伝えた契約になっているか確認する

・電気の検針票で契約アンペアを確かめ、11月からの基本料金と照らして見直す

・草刈りと見回りを、地元のシルバー人材センターなどに見積もってもらい、自分で通う交通費と比べる

1年分を合計してみると、「思ったより少ない」家もあれば、「こんなにかかっていたのか」という家もあるはずです。どちらが正解ということはありません。

ただ、毎年同じ金額を払い続けるのか、活かす・貸す・売るといった次の手を考えるのか。その判断の材料として、まずは「自分の家の年間コスト」を一度書き出してみてください。決めないまま時間が過ぎることにも、毎年の維持費と、家の傷みという2つのコストがかかっています。

__________

■出典

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 報告書」(2025年8月29日公表)

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907491.pdf

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査の調査結果」(報道発表、2025年8月29日)

https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html

・国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf

・国土交通省「土地の保有に係る税制」

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000073.html

・東京電力エナジーパートナー「電気料金単価表(低圧)」2026年11月1日からの見直し後の料金単価

https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2026/pdf/26x3203.pdf

・大阪市・公益社団法人大阪市シルバー人材センター「空家の管理でお困りではありませんか?」料金表(2025年2月)

https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/cmsfiles/contents/0000406/406807/202502_siruba_4nanbu.pdf

・土浦市「水道料金のご案内」

https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1751365519_doc_33_0.pdf

・長野県企業局「県営水道の水道料金について」

https://www.pref.nagano.lg.jp/kigyo/infra/suido-denki/suido/suido/josuido/suido-ryokin.html

・損保ジャパン「空き家の火災保険」(空き家の契約条件について)

https://www.sompo-direct.co.jp/eraberu/kotsu/article/column039.html

※試算の前提:税金は固定資産税1.4%・都市計画税0.3%、小規模住宅用地の特例ありで、土地評価額600万円・建物100万円・都市計画税なし(少なめ)〜土地1,500万円・建物300万円・都市計画税あり(多め)。電気は東京電力 従量電灯Bの2026年11月以降の基本料金(10A〜30A)に月10kWhの使用を加算(燃料費調整額・再エネ賦課金は省略)。水道は基本料金のみ。火災保険は年3万〜6万円と仮定。草刈りは大阪市シルバー人材センターの半日5,650円〜を年3〜4回(多めは1回1日分)と処分費1回1,500円(仮定)。交通費は往復2,000円×月1回〜往復2万円×年6回と仮定。修繕費、ガス、管理会社への委託費は含みません。

※「年間の維持管理に要する費用」の割合は、国土交通省調査の回答の分布です(推計値、不明2.9%を含む総数に対する割合)。

※住宅用地特例の解除後の税額は単純計算です。実際の税額は負担調整措置などにより異なります。管理不全空家・特定空家の判断や勧告は市区町村が行います。税額や特例の適用状況は、お住まいの市区町村の資産税担当窓口で確認できます。

※電気・水道・草刈りの料金は地域や事業者で異なります。ご自身の契約先の料金表や見積もりで確認してください。

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