
今回は「売ると決めたら最初に何を決めるのか」というお話です。
空き家を不動産会社に売ってもらうときは、まず「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結びます。媒介とは仲介のことで、買主探しを不動産会社に頼む約束です。この契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、査定のあとに「どれにしますか?」と聞かれて迷う方が少なくありません。
この記事では、法律で決まっている3つの違いと、レインズ(不動産会社どうしの物件情報ネットワーク)の公表データをもとに、空き家の売却ではどれを選ぶとよいかを整理します。
3つの契約の違いは、大きく2つです。
・何社に頼めるか:一般媒介は何社にでも頼めます。専任媒介と専属専任媒介は1社だけです。
・不動産会社の義務:専任系の2つは1社に絞る代わりに、不動産会社にレインズへの登録と、売主への活動報告が義務づけられています。
具体的には、専任媒介は契約から7日以内にレインズへ登録し、2週間に1回以上報告します。専属専任媒介は5日以内に登録し、1週間に1回以上報告します(日数は不動産会社の休業日を除いて数えます)。一般媒介には、どちらの義務もありません。
もう1つの違いは「自分で見つけた買主と直接契約できるか」です。一般媒介と専任媒介はできますが、専属専任媒介はできません。
専任系の契約期間は3か月以内と法律で決まっていて、更新は売主からの申し出が必要です。つまり、合わなければ3か月で別の会社に替えられます。

では、実際の結果に差はあるのでしょうか。不動産流通推進センターが公表しているレインズの集計によると、2025年に新しく登録された売り物件のうち、成約が報告された割合は次のとおりでした。
・専属専任媒介:27.3%
・専任媒介:26.5%
・一般媒介:9.4%
2024年も、専属専任22.1%、専任21.5%、一般7.6%と、同じような差が出ています。
ただし、この数字は「専任にすれば3倍売れやすい」という意味ではありません。一般媒介はレインズへの登録が任意で、同じ物件を複数の会社が登録することもあるため、数字が低めに出やすい面があります。また、人気のある物件ほど一般媒介が選ばれる、といった違いもあり得ます。あくまで「専任系は、登録された物件のうち成約まで報告される割合が高い」という事実として受け止めてください。

空き家の売却には、ふつうの自宅の売却とは違う事情があります。
・持ち主が遠くに住んでいて、現地に行きにくいことが多い
・価格が低めになりやすく、不動産会社にとって手間のわりに収入が少ない
・建物が傷んでいて、買い手が見つかるまでに時間がかかりやすい
こうした物件を一般媒介で何社かに頼むと、「どこかの会社が売るだろう」とお互いに様子見になり、結局どこも本気で動かない、ということが起こり得ます。しかも一般媒介には報告義務がないので、何が起きているのかが売主から見えにくくなります。
専任媒介なら、2週間に1回以上の報告があるので、遠方からでも「問い合わせが何件あったか」「内覧はあったか」を確かめられます。
心配されやすいのが「囲い込み」です。1社だけに任せたとき、その会社が両方の手数料をもらうために、他社からの買主の紹介を断ってしまう行為のことです。これについては、2025年1月から、不動産会社がレインズに取引状況(公開中・申込みあり・一時停止中)を登録することが義務になりました。売主はレインズの登録証明書にある2次元コードから、自分の物件の状況を確認できます。
空き家が不動産会社に後回しにされやすい理由の1つが、仲介手数料の安さでした。たとえば300万円の家なら、これまでの上限は税込15.4万円です。
これに対して国は、2024年7月から「低廉な空家等」の特例を広げました。売買価格800万円以下の物件なら、媒介契約の前に説明を受けて合意した場合に限り、手数料の上限を30万円+消費税(33万円)にできます。
売主の負担は増える場合がありますが、その分、不動産会社が手間のかかる空き家にも取り組みやすくなりました。アットホームが2025年に加盟不動産会社870社に聞いた調査では、800万円以下の空き家取引に「以前から積極的」「法改正を受けて積極的になった」「今後取り組む予定」と答えた会社が合わせて85.9%でした。
特例を使うかどうかは、契約前に必ず説明があります。金額と、その分どんな対応をしてもらえるのかを確認してから決めましょう。

ここまでをまとめると、空き家の売却では次のように考えると選びやすくなります。
・遠方に住んでいる、忙しくて現地に行けない → 専任媒介(定期的な報告がある)
・親戚や近所に買ってくれそうな人がいる → 専任媒介(自分で見つけた相手とも契約できる)
・駅に近いなど、買い手が多そうな物件 → 一般媒介も選択肢(複数社に競わせやすい)
・窓口を1社にまとめて、毎週報告がほしい → 専属専任媒介
どれが正解かは、物件の場所や状態、ご家族の事情によって変わります。ただ、空き家は持っている間にも維持費がかかり、建物も傷んでいきます。決めずに時間が過ぎることにもコストがある、という点は覚えておいてください。
その意味で、迷ったときは「専任媒介で、まず3か月」から始めるのが現実的です。3か月たって報告の内容や動きに納得できなければ、更新せずに別の会社や一般媒介に切り替えられます。

まずは「査定と質問」から
・2〜3社に査定を頼み、査定額だけでなく「根拠」と「売り方の提案」を比べる
・「専任にした場合、報告はどんな方法で、どれくらいの頻度ですか?」と聞いてみる
・800万円以下になりそうなら「低廉な空家等の特例を使いますか? その場合の手数料と対応は?」と確認する
査定を頼んだからといって、売らなければいけないわけではありません。まずは「うちの空き家ならどの契約が合うか」を、話を聞きながら考えてみてください。
取引した不動産屋さんにぶっちゃけ話も聞いてしまうタイプなのですが、担当の方は専任媒介となると会社としても販売に力が自然に入ると話してくれました。
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■出典
・宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約)、第46条(報酬)
・国土交通省「標準媒介契約約款」(専任媒介契約書・約款)https://www.mlit.go.jp/common/001154443.pdf
・公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(2025年分)」2026年1月20日 https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/katsuyo/2025_katsuyo.pdf
・同「指定流通機構の活用状況について(2024年分)」2025年1月22日 https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/katsuyo/2024_katsuyo.pdf
・国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(令和6年6月公布・7月1日施行)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
・国土交通省 報道発表「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」2024年12月24日 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00087.html
・アットホーム株式会社「『空き家』取引等に関する実態・意識調査」2026年1月26日 https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/questionnaire/akiya-report-202601/
※成約報告率は、レインズに新しく登録された売り物件の件数に対する、成約報告件数の割合です(2025年は全国の売り物件全体で17.3%)。同センターは、2025年1月のシステム改修が成約報告件数に影響している可能性があるとしています。
※一般媒介の契約期間に法律上の上限はありませんが、国土交通省の標準媒介契約約款では3か月以内とされています。
※仲介手数料の「原則の上限」は、売買価格(税抜)の200万円以下の部分5%、200万円超400万円以下の部分4%、400万円超の部分3%を足し、消費税10%を加えて試算しています。特例はあくまで上限で、適用には媒介契約前の説明と合意が必要です。
※アットホームの調査は、同社加盟の不動産会社を対象としたWebアンケート(2025年9月、有効回答870)です。
※契約内容や手数料の判断に迷うときは、契約前に不動産会社へ説明を求めるほか、各都道府県の宅地建物取引業の相談窓口や、宅建協会・全日本不動産協会などの無料相談も利用できます。
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