
親が亡くなったあとの実家には、家具や家電、衣類、食器、書類が何十年分も残っています。遠方に住んでいたり、仕事で時間が取れなかったりすると、遺品整理や不用品回収の業者に頼むのは自然な選択です。
ただ、この分野では料金をめぐるトラブルが増えています。この記事では、国民生活センターと総務省の資料をもとに、次の3つをまとめました。
・どんなトラブルが、どのくらい起きているのか
・料金の目安と、見積もりで確かめること
・「許可」の見分け方と、高額請求されたときの対処
国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によると、空き家の取得のしかたは「相続」が57.9%で最も多く、空き家になったきっかけも「所有者の死亡」が58.3%でした。
つまり、多くの空き家は「親が亡くなり、家財が残ったまま」の状態から始まります。売る・貸す・解体する、どの道を選ぶにしても、まず家の中を片付ける必要があります。
その片付けを業者に頼む人が増えるなかで、トラブルも目立つようになりました。
全国の消費生活センター等に寄せられた「不用品回収サービス」の相談は、2018年度の1,354件から、2021年度には2,231件になりました。3年で約1.6倍です。

国民生活センターが紹介している相談には、次のようなものがあります。
・「軽トラックパック7,000円、2トントラックパック2万5,000円」という広告を見て頼んだら、積み込み後に25万円を請求された
・「トラック詰め放題」のはずが、当日になって「荷台の囲いの高さまで」と言われ、断るとキャンセル料を求められた
・軽トラック1台分に満たない量なのに2台分を請求され、銀行で現金をおろすよう言われた
共通しているのは、広告の安い金額を見て頼んだのに、作業後に大きく違う金額を言われる、という流れです。
遺品整理サービスの相談も、2013年度の73件から2017年度の105件へと増えていました。「高額な追加料金が発生した」「処分しないでと頼んだ物を処分された」といった内容です。2025年10月にも、国民生活センターは「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」と改めて呼びかけています。
遺品整理の料金には、国が決めた基準や公認の相場はありません。総務省の調査で集めた実際の見積書75例を見ると、10万円超〜40万円以下が54例で、全体の約7割でした。100万円を超える例も2例あります。

国民生活センターに寄せられた相談事例の分析では、契約金額の平均は約42万円、実際に支払った額の平均は約30万円でした。そして、支払いの9割以上がその場での一括払い(現金等)でした。
金額の幅が大きいのは、家の広さや荷物の量、階段の有無、トラックが停められるかなどで、作業がまったく違うからです。だからこそ「1社だけの見積もり」や「広告の金額」だけで判断するのは危険です。
見積書の書き方も業者によってさまざまです。総務省の調査では、項目ごとに積み上げる業者もあれば「〇〇一式」とだけ書く業者もありました。契約書を取り交わしていたのは69社中43社(約6割)で、残りは見積書で代用したり、作成していなかったりしました。
業者選びでいちばん大切なのが「許可」です。
家庭から出る不用品をごみとして集めて運ぶには、廃棄物処理法にもとづく「一般廃棄物収集運搬業の許可」(市町村長が出す)か、市町村からの委託が必要です。

ここで注意したいのは、チラシやサイトに「許可番号」が書いてあっても、それが別の許可である場合があることです。
・産業廃棄物収集運搬業の許可:会社や店から出る「事業のごみ」用。家庭のごみは運べません
・古物商の許可:中古品の買い取り・販売用。家庭のごみは運べません
国民生活センターは、トラブルになっているのは産業廃棄物の許可しか持たない業者など、一般廃棄物の無許可業者が目立つと指摘しています。無許可業者に頼むと、回収した物がきちんと処理されたか市町村が確認できず、不法投棄につながるおそれもあります。
総務省の調査では、協力した遺品整理事業者69社のうち、一般廃棄物の許可を持っていたのは34社(約半数)でした。許可のない事業者の多くは、許可業者と組んで廃棄物を運んでもらうなどしています。ですから「許可がない=すぐ悪質」とは限りません。大事なのは、不用品を最終的に「だれが運ぶのか」を、見積もりの段階で確かめることです。
なお、遺品を買い取ってもらう場合は「古物商の許可」が必要です。買い取りがあるときは、古物商許可証も確認しましょう。
国民生活センターは、場面ごとに次のように助言しています。
・作業の前:当日、作業前にもう一度料金と内容を確かめる。見積もりからの変更に納得できなければ、作業前にきっぱり断る
・作業の後:事前に聞いていない高額な料金を請求されたら、後日、納得できる金額なら払う意思を示しつつ、その場での支払いは断る
・身の危険を感じたら:警察に連絡するのも一つの方法
また、見積もりのために呼んだ業者とその場で契約した場合や、広告の金額と請求額が大きく違う場合などは、特定商取引法の「訪問販売」として、クーリング・オフ(一定期間内なら契約を取り消せる制度)などが使える可能性があります。「クーリング・オフはできない」と書かれた書面にサインさせられた相談例もありますが、あきらめずに相談してください。
困ったときは、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、近くの消費生活センター等につながります。

片付けは、空き家をどうするかを決めるための第一歩です。同じ調査では、「売却用」の空き家は約3割が1年のうちに空き家でなくなっていましたが、使い道が決まっていない空き家で解消したのは約15%でした。どれが正解かは家庭によって違いますが、片付けが進まないまま時間が過ぎると、その間も維持費はかかり続けます。
今日できることを4つ挙げます。
・実家のある市町村のホームページで「一般廃棄物収集運搬業 許可業者一覧」を検索してみる
・残したい物(写真、書類、通帳、思い出の品)を家族で話し合い、リストにしておく
・業者に頼むときは、2〜3社から書面で見積もりを取り、追加料金とキャンセル料の条件を比べる
・片付けのあとに、売る・貸す・解体するのどれにするか、家族で一度話してみる
焦って「今日来られます」「今なら半額」という業者に決めないこと。それだけでも、多くのトラブルは避けられます。
_________
■出典
・国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」(2022年11月2日公表、11月11日更新)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html
・国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル-料金や作業内容に関するトラブルが発生しています-」(2018年7月19日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180719_1.html
・国民生活センター「見守り新鮮情報 第525号 遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(2025年10月30日公表)
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen525.html
・総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(2020年3月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000675388.pdf
・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」(2025年8月29日公表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html
※相談件数は、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された件数で、消費生活センター等からの経由相談は含みません。不用品回収は2022年9月30日まで、遺品整理は2018年6月30日までの登録分です。
※国民生活センターの「遺品整理サービス」の相談件数には、廃品回収サービス等で遺品を処分した場合の相談を含み、遺品の買い取りを目的とする相談は含みません。
※総務省の調査は、協力が得られた69事業者・75例の見積書をもとにしたもので、統計的な抽出ではありません。見積額は実績値ではなく、全体の相場を示すものでもありません。契約金額の平均(約42万円)と支払額の平均(約30万円)は、国民生活センターが相談事例を分析した値です。
※空き家の利用状況の変化は、令和5年10月1日から令和6年12月1日までの変化です。「使い道が決まっていない空き家」は調査上の「使用目的のない空き家」を指します。
※クーリング・オフなどが使えるかどうかは、契約の状況によって異なります。個別のケースは、消費者ホットライン188(お住まいの地域の消費生活センター等)にご相談ください。許可業者の一覧は、各市町村のホームページや廃棄物担当窓口で確認できます。
← 前の記事(第33回)
空き家率13.8%で過去最高。買い手は減り、売り手は増える時代に「早く動く」べき理由